ドッグスクール小野(犬の訓練所)  メール質問箱
愛犬Q&Aコーナー(No.038)


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セラピー・ドッグについて
質問者:(正彦)さん 

学校で、総合学習をしています。疑問がでたので、こたえてください。

1、きちんと訓練されている犬でも、突然あばれだしたらどうするのですか。
2、訪問した施設の人は、つれてきたセラピ−ドックをこわがらないのですか。
3、どんな犬種でも、セラピ−ドックにはなれるのですか。
4、今、セラピ−ドックは、日本で何匹いるのですか。
5、どういう方法で、訓練をするのですか。
6、普通の犬とは、ちがうものを食べているのですか。
7、人をいやすだけで、ストレスはたまらないのですか。また、もしたまってしまったら、どういう方法でストレスをはっさんさせるのですか。
アドバイザー
CAPP会員(セラピーのボランティア・グループ)
松崎様にお答え頂きました・・・m(__)m
1、きちんと訓練されている犬でも、突然あばれだしたらどうするのですか。

通常、セラピー活動に参加する動物達は、その性格やトレーニングのレヴェル、また生活全般においてのマナーについて、ある程度の厳しい適性検査が行われます。他の動物達に対しての対応の仕方、人に対しての接し方などをチェックするのです。
突然、何の理由もなく暴れだすような心配のある子は、その時点で参加する資格が与えられないわけです。とは言うものの、適性があると認められていても、活動現場においてどんなことが起こるかは、誰もわからないので、動物達の様子をしっかりと観察して、なんらかのストレスサインや、不安、恐れ、苛立ちなどの状況をハンドラー(動物の飼い主)はもちろん、活動のコーディネーターは常に注意しています。そのような活動現場においての不適切な心理的状況が少しでも認められた場合には、ハンドラー自ら、または、ハンドラーが気がつかなかった場合にはコーディネートしているスタッフがそっと会場の外に出て、気分転換させてくるように促します。
でも、万が一、会場内で動物同士がほんの少しでもいがみ合ったり、吠えたり、コントロールを出来なくなるような状況になった場合には、スタッフが直ぐに動物のコントロールをできるようにハンドラーを援助して、会場の外に出すか、または動物同士の間に壁を作り、動物同士の視線を遮断して、落ち着かせるようにします。
大切なのは、常に事故が起こるカも知れないということを予想しておいて、動物達の様子を注意深く観察し、把握し、状況を判断して、未然に回避するように努力することです。
  
キチンとコーディネートされたセラピー活動においては、必ずボランティアの人と動物をフォローするスタッフが何人か一緒に活動に参加します。そして、活動の前後にミーティングを行ないますから、このミーティング会場においてその時の動物達のコンディションが大体チェックできるわけです。この時点で、何らかの問題がありそうだとわかった時には、その動物とボランティアは活動への参加を断念したり、あるいは、会場内でのポジション取りについて、工夫したりもします。
  
以上のように、かなりの厳重なチェックと注意、配慮をして活動に入りますから、会場内で、突然動物が暴れだすようなことは、殆んど起こらないようです。このような厳重なシステムが取り入れられていない場合には、起こりえるでしょうけれど。
結構下準備が大変なんです。動物達の精神状態が安定していないとセラピー(治療)の効果も得られないわけですから。
動物がストレスを抱えていたら、それが伝わり、まったく逆効果になってしまいます。ですから、常に精神状態が安定している動物の参加が求められるようです。

2、訪問した施設の人は、つれてきたセラピ−ドックをこわがらないのですか。

基本的に、その施設内で、動物の訪問を受け入れる場合、最低条件として動物が好きであるとか、本人が動物に興味があるとか、自ら動物の訪問を受け入れたいと希望する人がその対象として選ばれます。
動物の介在によって、何らかのプラス効果を狙うわけですから、動物が嫌い、怖い、嫌だ、などのマイナスイメージを持っている方は、訪問活動が行なわれる会場には参加されないでしょう。
中には、犬が好きで、見たいけれど、そばに来られるとちょっと怖いとか、見ているのはよいが、触りたくない、あるいは触られたくないという気持ちの方が参加されることもあります。このような場合、事前のミーティングの時に、それぞれの参加者についてこのような説明が紹介されますので、ボランティアと動物たちは、それらの希望に添うように活動をアレンジして進めます。

今までの経験では、小型はOKだけど、大型犬は嫌だというような方が多かったです。しかし、大型犬でもおとなしいということがわかると、自分から手を伸ばして触ろうとしてきたり、今までの印象を払拭して、大型犬の尻尾を掴んだりして喜んでみたり、かなりの変化は出てきます。
  
動物介在療法の場合、動物を受け入れたいという気持ちがない方には、この療法は不適切なものです。動物が来ることがその患者さんにとってストレスになるのであれば、このような療法とは別の方法を取るべきでしょう。
音楽療法、焼き物作り、ダンス療法、などいろいろなメニューがあります。その中の1つとして、動物介在療法が位置付けられていますので、全ての方に受け入れられる療法ではないと思います。
それはどんな療法でも同じ事でしょう。本人の気持ちが一番大切ですから、訪問活動を受け入れる施設の方で、事前にそれらの対象者の選択や、希望についての把握をして置かれることが下準備として必要となります。

3、どんな犬種でも、セラピ−ドックにはなれるのですか。

犬種については、問われません。しかし、基本的にはピットブル等のように、攻撃性の強い犬は不向きだと思います。
犬種よりも性格についてのチェックが厳しいです。
他の犬達と一緒に活動するわけですから、たとえそれがチワワであっても、他の子に対して、歯をむき出して威嚇するような性格の犬は不向きですし、会場に来られては他のボランティアたちにとっても、参加者にとっても大変迷惑です。まず、性格についての適性チェックがおこなわれますので、この段階で参加資格を疑われます。
基本的にニンゲンが好きで、従順で、ハンドラーのコントロールに従い、マナーが良くて、楽しんで活動できるタイプの子であれば、もしかしたら、ドーベルマンでも、ロットワイラーでも、また、ピットブルでも問題はないと思います。
コワモテのワンちゃんは、参加者の方から怖がられてしまうので、よりいっそうなにか笑いを得られるような一芸が必要になるかも・・・。ゴールデンでさえ、大きくて怖がられるのです。ミックスでも充分人気者になっている子は多いです。

4、今、セラピ−ドックは、日本で何匹いるのですか。

  正直申しあげて、正確な数字は今わかりません。
  JAHAの主催するCAPP会員のボランティアと犬だけでも日本全国に約800組くらいは
  いるようです。 
  この中でも、セラピードッグとしての認定を受けた犬となると、その数は、もっと減るでしょう。
  経験やハンドラーと犬の技量が問われるテストが行なわれています。
  条件としては不妊手術をしている犬が対象とされているようです。

5、どういう方法で、訓練をするのですか。

特別な訓練方法と言うのはありません。ただ、競技会に必要とされるような敏捷性や正確性よりも、家庭犬としての柔らかい、自然な動きでコマンドに従えば充分のようです。基本は、服従訓練でしょう。ただし、強いジャークが必要となったり、チェーンカラーや、スパイクチェーンのカラーを着けての活動参加は勧められません。
ジャークをかけたりする動きや、またチェーンの音が参加者の多くの方々にあまり良いイメージを与えないようです。動物を強制的に動かしているイメージや、クサリの金属音はマイナス印象を与え、ある意味で不快感を与えることになるそうです。
厳しい口調のコマンドも不向きです。スムーズに、参加者との対話をしながら、まるで会話をしているように、犬にもコマンドをだして、動かすようにすることが望まれます。柔らかい言葉、口調、声のトーンが要求されますから、このようなコマンドで犬がスムーズに動いてくれるようなトレーニングが必要になります。でもこれは、基本的な服従訓練が入っていれば、日々の生活の場で、充分練習できることだと思います。

人が好きであることは最低条件ですが、だからと言って、むやみに顔や手を舐めまわしたり、飛びついたり、両前足を相手にかけたりなどの行動はしないように気を付けます。他の犬と会場で出会っても、じゃれあったり、取っ組み合ったりせずに、おとなしく挨拶して、静かにしていることが要求されます。
ミーティングの間は、静かに伏せて、おとなしく寝ているか、待っていなくてはいけませんし、歩くときは、常にリードがたるんだ状態で、ハンドラーの横についているべきです。(結構苦労します。)
常に落ち着いて、ストレスサインが出ないように、ハンドラーは気を配る必要もあります。活動に入る前に、犬達同士で、充分挨拶させておいたりすると、案外室内では落ち着いて活動します。
活動終了後には、ご褒美の意味も含めて、公園などで思い切り犬同士で遊ばせたりします。会場とは、まったく違った表情を見せてくれます。

6、普通の犬とは、ちがうものを食べているのですか。

みなそれぞれですよ。手作りご飯の家庭、ドッグフードの家庭、生食の家庭、いろいろです。しかし常日頃より、健康状態についての管理はこまめにおこないますから、粗悪なフードや栄養面で余りに偏るような食生活をしている犬はいないようです。
年に1回から2回の健康診断は必ず行ないますし、ワクチン接種も必要です。食事の内容が粗悪なものですと、性格に異常をきたします。
ですから、みな栄養面、添加物などには、常に細心の注意を払って吟味してフードをえらんだり、また、その方面の勉強もおこたりません。

皮膚炎などが出ている場合には、活動にも参加できません。ましてや感染症などのある子、寄生虫がある子は会場にもはいれません。被毛の手入れも日頃からこまめに行い、常に清潔にしておく必要があります。体や口がクサイなどというのは、問題外です。

7、人をいやすだけで、ストレスはたまらないのですか。また、もしたまってしまっ たら、どういう方法でストレスをはっさんさせるのですか。

人が好きな子、人に触られるのが好きな子が参加資格の最低条件となります。
活動の時間もだいたい30分から40分が限度です。これ以上長くなると犬達もストレスがかかります。
人に触られたりするのが嫌な子、人見知りの激しい子が参加することはできませんから、その意味では、ストレスは最小限にとどめられているでしょう。しかし、その子のその時々の体調や、気分などで、活動中になんらかのストレスサイン(あくび、頻繁な瞬き、パンティング、落ち着きの無さ、体を掻く・・・など)が見られた場合には、ハンドラーは速やかに会場から犬を連れ出し、廊下を早足で歩いたり、オモチャであそんだり、外の空気を吸わせてやったり、水を飲ませたりなどの気分転換を図ります。決して犬のストレスをためるようなことはしません。
もし、ハンドラーが気が付かなくても、コーディネートスタッフが注意をしているので、知らせてくれます。
犬達が基本的に人好きなので、参加者も心が和み、優しい笑顔を見せてくれると、それだけで、犬達も嬉しいようです。しかし、時間は厳守して、どんなに盛り上がっていても、時間がきたら、セッションは終了するようにします。
犬達のストレスを最小限にとどめるための配慮は常におこなわれています。

先にも書きましたが、活動終了後、皆で公園に行き、犬達を思いっきり走らせたり、犬同士で遊ばせたりしてお行儀良くしていたことに対してのご褒美を与えます。犬たちは、無理に参加させられることはありません。
犬の気分が乗らない場合にはハンドラーは参加を見合わせます。体調不良の場合、ヒートが来ている時も勿論参加を見合わせます。犬が自分から喜んで活動に参加できるように配慮しています。気負って、人を癒してやらねば・・・なんて思っている犬はいないようです。

セラピー活動に必要なことは、受け入れる施設のスタッフと、コーディネートするスタッフと、ボランティアパートナーが、充分に参加者についての情報を交換し、適切な活動が出来るようにアレンジすることだと思います。
施設側のハード面、(犬たちが歩きやすいように、カーペットを用意する、ミーティングルームと活動現場との距離があまり離れすぎていない、敷地内で排尿・排便ができる、活動会場の広さと参加者の人数のバランス、犬達が動きやすいように参加者達のイスの位置を決めるなどなど・・・)が結構重要なポイントになります。
会場が2階や3階の場合、階段ではなくエレベーターが使えるかどうか、雨の日には、施設のエントランスで、体を拭いたりするスペースが有るかどうか、駐車場の準備などなど、様々です。
このあたりについて、動物にたいしての理解が施設側に無いと、活動はスムーズに運ばないことがあります。
動物について充分理解しているコーディネーターが事前に施設側と充分な打ち合わせを行なうことが必要でしょう。
DS小野、管理者
正彦さんのセラピー・ドッグについての質問を松崎様にお尋ねしたところ、お忙しい中大変分かりやすく丁寧にお答え頂きました。
また私のホームページへの掲載についても快くご了承頂き、御礼申し上げます。

“学校での総合学習”との事ですが、少しでも参考になれば幸いです!